2020年3月 7日 (土)

才能は扉に隠れてる

今回読んだのは、「微笑む人」貫井徳郎著。

テレビドラマを見たのを機に、読んでみました。

テレビドラマも面白かった(楽しい意味ではなく、興味深いという意味で)けど、やはり小説の方が、細かい描写や追加のエピソードがあって、いっそう厚みを感じた。小説の面白さを全部テレビドラマにするには限界がある。だからこそ、ドラマ化の際には、原作とは違う味付けが必要になるのかもしれない。

今回の本では、内容とは別のことで発見がありました。

それは、各章の扉ページ。
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分かりますか?各章のタイトルが、背景のドットの中に隠れているのです。

4分の3ほど読み進めたところで気づき、とても感動しました。このデザイン、すごい!装幀担当者がこの部分もデザインするのでしょうか。ちなみに、この本の装幀は「welle design 坂野公一+吉田友美」とクレジットされています。

こういうデザインを思いついて、しかもそれを形にできる人を才能がある人と言うのだなと感服すると同時に、ああ、私って凡人!とあらためて自覚しました。

今日の「ありがとう」は、紙媒体の本の素晴らしさに。

2020年2月 3日 (月)

幻想と清涼感と

節分なので、小さい声で「鬼は外、福は内」とつぶやきながら、こそこそと室内に豆を撒き、そそくさと掃除して、イワシを食べました。

さて、読み終わったのは「道化師の蝶」円城塔著。

前々回に読んだ「方形の円 偽説・都市生成論」(ギョルゲ・ササルマン著)となんとなく関連性を感じて手に取りました。円=円、城・塔→都市の建造物、道化→偽説。勝手な連想ですが。

とても難解な物語ですが、理解する必要はないと思いながら読めば、さらさら読めます。若い時に読んだドイツ作家の小説(作家名・作品名ともに失念)の中に出てきた幻想小説が思い起こされ、なんとなく欧州の作家のようなイメージを抱きました。

その一方で、池澤夏樹の「夏の朝の成層圏」を初めて読んだ時のような清涼感も蘇りました。「道化師の蝶」も「夏の朝の成層圏」も、私好みの装丁。

とりあえずさらさら読み終わったけど、また機会があったら「じっくり」読み返してみたいと思います。収録作の「松ノ枝の記」も理解を超えて(外れて)面白かったです。

今日の「ありがとう」は、話題のスイーツをお裾分けしてくれたT橋さんに。
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2020年1月27日 (月)

無垢はホラー

実は2週間程前に読み終わっていた「月と蟹」道尾秀介著。

小学生の男子が主人公。父を病で亡くし、母とともに祖父(父の父親)のところに身を寄せる。

主人公も、母も、祖父も、クラスで唯一仲の良い少年も、なぜかよく話しかけてくる少女も、それぞれ“何か”を抱えている。

「ヤドカミ様」と称してヤドカリを火で炙る儀式。母の恋人、あるいは友達のDV父の死を祈る。子供ながらの残酷な行為とか、閉ざされた子供独特の世界で実現してはいけないことを願ってしまうとか、本当は私がのぞき見てはいけないのではないかと思いながら、息を潜めて読み進めていきました。

何か良くないことが起こるに違いない。でも私には助けてあげることはできない。ああ、どうしよう。そんな感覚が「ホラー」ともいえる小説でした。

主人公が少年であることから、十分には感情移入できないところもあったけど、子供って、無垢であると同時に、無慈悲で、脆弱で、危険。

誰かれにでもお勧めしたい作品というわけではないけど、内容ずっしりの小説でした。

今日の「ありがとう」は、まだ影響が出ていない交通機関と天候に。ふと気付くと、雨が降り出しています。今夜のうちに雪になるかもしれないとか。

2020年1月 3日 (金)

都市はハッピーになりえるか

「方形の円 偽説・都市生成論」ギョルゲ・ササルマン著

ネットでたまたま見かけた“ギョルゲ・ササルマン”という作家名が気になり、図書館で借りて読んでみました。36の架空都市の誕生、あるいは繁栄、あるいは崩壊、あるいは消滅を描いた短編集。1都市あたり数ページという、読書苦手な人にも読みやすい短さ。

手塚治虫の「火の鳥」をぎゅっと3~4ページに凝縮した感じで、短いながらも、1つ読み終わるごとに、ちょっと胸が苦しくなったり、ざわついたりします。

36都市のうち、ハッピーな都市は1つもありません。都市がハッピーになることは、不可能にも思えてきます。発展するごとに、何かを見失っていくような。

ところで、たいてい図書館で借りる本は、いろんな人の手に触れてきたので、そこそこ汚れていますが、この本は昨年6月に発刊されたばかりで、しかもあまり貸し出されていなかったようで、かなりきれいでした。「自分で買う本ってこんな感じだったっけ」と、久しぶりに本を買ってみたくなりました(なりましたが、実行に移していません)。

今日の「ありがとう」は、復路も感動をくれた箱根駅伝の選手たちに。今年ブレーキもなく、リタイアもなく、全選手無事に走り終えてよかったよかった。総合優勝は青学でした。やっぱり原監督は名将ですね。

2020年1月 2日 (木)

高速、箱根駅伝

年末にせっかく買っておいた正月用の敷紙を昨日使い忘れたので、もう一度、正月の朝食をパチリ。
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今日は箱根駅伝往路だったので、朝早くから朝食の準備をして、7時半にはテレビの前にスタンバイ。年末からずっと頭痛が抜けないので、まずは頭痛薬を飲んで、箱根駅伝スタートとともにスパークリングワインで乾杯!(良い子の皆さんは真似しないように)

油断して飲み続けると、あとで頭がグヮングヮンすることが分かっているので、早々にお茶に切り替えてテレビ観戦を続行。

今年は新記録続出の高速レースになりました。ネットに流れている情報によると、某スポーツメーカーのランニングシューズが影響しているとか。

しかし、靴のおかげで脚が早く先に進むとしても、その進み方に耐えられる脚力が必要なわけで、誰が履いても速く走れるというものでもないのだろうな…と思うのですが、いかがでしょうか。

ちなみに往路優勝は青山学院大学でした。

駅伝観戦後は余力が残っていたので(アルコールを早めに切り上げたためダレていないので)、和菓子を作ってみました。もうちょっと緑が見え隠れしていた方が美しいけど、まあ、自分しか食べないことを考えれば、そこそこの出来でしょう。人に食べてもらうにはイマイチどころか今百ですが。
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今日の「ありがとう」は、さっそうと駆け抜ける駅伝選手たちに。明日の復路も楽しみです。

2019年12月17日 (火)

あるべき所に収まったことがない

「きいろいゾウ」西加奈子著。

主人公のツマは子供のよう。子供のようなツマの発言や心の描写は、無垢な子供が発する言葉そのままという感じで、とても分かりやすく、心にストレートに伝わってくる。無邪気なツマの行動や言葉を微笑ましく思いながら、ちょっと心洗われる気持ちにもなる。

でも実は、ツマも含め、ツマの周りの登場人物のほとんどが、どこかに生きづらさを抱えている。生きづらさをしくしくと実感しながらも、ときには無邪気に、ときには無頓着に、自然に身を委ねて生活していく。

その諸々の生きづらさが、ある人(ツマにとってのムコさん)と出会った時に「あるべき所に収まった」という感覚が良い! 私はそんな感覚を味わったことがないけど(苦笑)

優しい心を取り戻したい、と思わせてくれる作品でした。

今日の「ありがとう」は、速攻で頭痛薬が効いてくれたことに。

2019年10月 9日 (水)

じっくりと淡々と静かに

「土の記」(高村薫著)。どういう内容かチェックせず、久しぶりに高村薫を読んでみようと、事前情報無しで手に取りました。

高村薫の作品では、合田雄一郎が登場する推理ものが好きなのですが、読み進めていくと、どうやらこれは合田シリーズではなさそう。

事故により16年間植物状態だった妻を亡くしたばかりの男の生活が、じっくりと淡々と語られていく。ストーリーがどういう方向に進むのか分からないまま、じっくりと淡々と細かく書き込まれた文章を読み進めるのは、私にはちょっと辛い。

「晴子情歌」も上巻はかなり辛かった。それでも、下巻になると、それまでまとまりのつかなかった数々のエピソードがだんだんとひとかたまりになって大団円へと向かっていく印象だった。

そんな感じかな、と思いながら、上巻を終え、下巻に移行。下巻もやはり、じっくりと淡々と、細かく、静かに・・・。

そんな中でも、事故に対する疑念、妻との過去の心弾む思い出やわずかな亀裂、若い頃の娘の反抗、現代っ子の孫の滞在、娘の再婚、脳溢血、そして遠くの地(小説の舞台は奈良県)での東日本大震災と、大小さまざまな動揺が寄せては引き、寄せては引き・・・。

晴子情歌のような大団円もなく、静かに進み、静かに終わる小説だった。

と思いながら、他の読者の感想などをネットで読んでいたら、「まさかの終わり方」「結末があまりにも予想外」などの言葉が。私は何か読み落としていたのかもしれない、と、図書館に行って最後を読み直した。

なるほど。意外と言えば意外かもしれない。でも、読み落としていたわけではなかった。つまり、私にとっては意外ではなかった。

しかし、読み進めるのが辛い小説だったな。だいぶ“飛ばしながら”読んでしまった。

それにしても、米作りの描写の細かさには驚いた。米作りはこんなにも科学的だったのか。台風が接近して空模様が怪しくなってから、あわててトラクターを引っ張り出すテレビドラマの演出が(放映当時はけっこう感動しながら見ていたけど)とても薄っぺらい印象に変わってしまった。

次に高村薫作品を読む時は、やっぱり合田シリーズにしよう。

今日の「ありがとう」は、心地よい秋晴れに。しかし大型で猛烈な台風が接近中。大きな被害がないことを祈ります。

 

2019年9月19日 (木)

語らぬ心の嵐

ちょっとサボリ気味の読書、先日1つ読み終わりました。「偽日記」村松友視著。「自伝」といっていいのかな。

著者がこの世に誕生する前に、父親が亡くなったため、祖父母の養子となって育てられる。そんな背景と、祖父が有名な作家であることから、ちょっと変わった幼年・少年・青年時代を送る。戦中・戦後の様子も、一般的な庶民の様子と共通するところもあり、しないところもあり。そんなことが作用してか、戦後の生活が苦しいような部分も、それほど暗くならずに読み進められる。

著者の目を通して、世間や家族の様子が描かれ、話しが進んでいくのだけど、最終的に、この物語の主役は祖母であるような気がする。

当然、著者が祖母の心の内を分かる由もなく、それ以前に、祖母は自分の感情や考えを露わにするタイプではないので、終始、祖母の存在感は比較的あいまいなままなのだけど、最後に、この人の心の中はずっと嵐だったのではないかと思わせる。といっても、最後まで、彼女が本当は何を思い続け、何を抑え続けて生きてきたのかは分からない。彼女の心の中を説明する文章は、ほぼ無い。なぜなら、祖母が著者に心の中を語ることはなかったから。

書かれていない彼女の心の中が気になる。常にざわざわして、時には高波が白い飛沫をあげていた(はずの)心の中が気になる。そんな事を考えながら、読了数日後にじわじわと胸が苦しくなりました。

これは「自伝」というより「自伝的小説」かな。

今日の「ありがとう」は、デパ地下のL紅茶店に。紅茶2品を買ったら、会計のレシートに「当たり」が出て、もう1品もらいました。なんというラッキー!ラッキーすぎて申し訳ない。

2019年6月26日 (水)

なんとなく、もたまにはいいね

「PK」(伊坂幸太郎著)。

伊坂幸太郎の作品は、少し悲しくて、少し優しくて、少し怖くて、少し可笑しい。突き放すような冷たい雰囲気があるけど、なんでも受け入れてしまう温かさも感じる。

タイトルの「PK」は、そのまんま、サッカーの「PK」のこと。過去のとある国際試合でのPKを巡って、過去と現在が不思議な形で“連鎖”する。何やら不穏な存在が見え隠れするのだけど、それが何かは分からない。なんだか分からないけど、なんとなく「解決」したような、しないような。

人によっては、「あー!もやもやする!」という気持ちになるかもしれません。終わりがはっきりしていなくても、まあいいか、と流せる私はそこそこ楽しめました。

終始漠然としているけど、「臆病は伝染する、そして勇気も伝染する」という言葉は、明確な存在として頭に残りました。

今日の「ありがとう」は、わざわざお土産と誕生日プレゼントを持ってきてくれたK子さんに。こちらがいつもお世話になってる側なのに、本当に恐縮です。

2019年6月11日 (火)

想像力発動せず

「罪の声」(塩田武士著)。一週間くらい前に読み終わっていたのだけど、なんやかんや忙しかったので時間が空きました。

あまり心が落ち着かない状態で読み進めていたせいか、なかなか文章からうまく想像が広がらず、堪能しきれなかった気がする。作品の良し悪しではなく、私の態勢が整っていなかったせい。たぶん。

イギリスのヨークの場面でも、私の乏しい記憶の引き出しからイギリスの空が浮かんでこなかった。高村薫の「リヴィエラを撃て」では、ケンブリッジの場面で気が遠くなるくらいイギリスの風景が蘇ってきたんだけどなぁ。

それでも、終盤で、子供の時に犯罪に声を使われた男性が、これまでの人生を告白するシーンは、胸が締め付けられた。そして最後の最後に、思いがけない人の思いがけない告白が…。

辛い話しだった。でも少し希望は残された。

物語の下地になった「グリコ森永事件」の頃、私はそこそこ大きくなっていたのだけど、けっこう忘れていたことが多い。あの事件、未解決だったのね。

「罪の声」は映画化が決まっていて、小栗旬、星野源の共演で来年公開予定。小栗旬が新聞記者・阿久津英士、星野源がテーラー・曽根俊也を演じる。うん、2人とも合ってると思う。他のキャスティングも楽しみだ。

今日の「ありがとう」は思ったより顔を出してくれた太陽に。洗濯物、8割乾きました。

 

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