2019年10月 9日 (水)

じっくりと淡々と静かに

「土の記」(高村薫著)。どういう内容かチェックせず、久しぶりに高村薫を読んでみようと、事前情報無しで手に取りました。

高村薫の作品では、合田雄一郎が登場する推理ものが好きなのですが、読み進めていくと、どうやらこれは合田シリーズではなさそう。

事故により16年間植物状態だった妻を亡くしたばかりの男の生活が、じっくりと淡々と語られていく。ストーリーがどういう方向に進むのか分からないまま、じっくりと淡々と細かく書き込まれた文章を読み進めるのは、私にはちょっと辛い。

「晴子情歌」も上巻はかなり辛かった。それでも、下巻になると、それまでまとまりのつかなかった数々のエピソードがだんだんとひとかたまりになって大団円へと向かっていく印象だった。

そんな感じかな、と思いながら、上巻を終え、下巻に移行。下巻もやはり、じっくりと淡々と、細かく、静かに・・・。

そんな中でも、事故に対する疑念、妻との過去の心弾む思い出やわずかな亀裂、若い頃の娘の反抗、現代っ子の孫の滞在、娘の再婚、脳溢血、そして遠くの地(小説の舞台は奈良県)での東日本大震災と、大小さまざまな動揺が寄せては引き、寄せては引き・・・。

晴子情歌のような大団円もなく、静かに進み、静かに終わる小説だった。

と思いながら、他の読者の感想などをネットで読んでいたら、「まさかの終わり方」「結末があまりにも予想外」などの言葉が。私は何か読み落としていたのかもしれない、と、図書館に行って最後を読み直した。

なるほど。意外と言えば意外かもしれない。でも、読み落としていたわけではなかった。つまり、私にとっては意外ではなかった。

しかし、読み進めるのが辛い小説だったな。だいぶ“飛ばしながら”読んでしまった。

それにしても、米作りの描写の細かさには驚いた。米作りはこんなにも科学的だったのか。台風が接近して空模様が怪しくなってから、あわててトラクターを引っ張り出すテレビドラマの演出が(放映当時はけっこう感動しながら見ていたけど)とても薄っぺらい印象に変わってしまった。

次に高村薫作品を読む時は、やっぱり合田シリーズにしよう。

今日の「ありがとう」は、心地よい秋晴れに。しかし大型で猛烈な台風が接近中。大きな被害がないことを祈ります。

 

2019年9月19日 (木)

語らぬ心の嵐

ちょっとサボリ気味の読書、先日1つ読み終わりました。「偽日記」村松友視著。「自伝」といっていいのかな。

著者がこの世に誕生する前に、父親が亡くなったため、祖父母の養子となって育てられる。そんな背景と、祖父が有名な作家であることから、ちょっと変わった幼年・少年・青年時代を送る。戦中・戦後の様子も、一般的な庶民の様子と共通するところもあり、しないところもあり。そんなことが作用してか、戦後の生活が苦しいような部分も、それほど暗くならずに読み進められる。

著者の目を通して、世間や家族の様子が描かれ、話しが進んでいくのだけど、最終的に、この物語の主役は祖母であるような気がする。

当然、著者が祖母の心の内を分かる由もなく、それ以前に、祖母は自分の感情や考えを露わにするタイプではないので、終始、祖母の存在感は比較的あいまいなままなのだけど、最後に、この人の心の中はずっと嵐だったのではないかと思わせる。といっても、最後まで、彼女が本当は何を思い続け、何を抑え続けて生きてきたのかは分からない。彼女の心の中を説明する文章は、ほぼ無い。なぜなら、祖母が著者に心の中を語ることはなかったから。

書かれていない彼女の心の中が気になる。常にざわざわして、時には高波が白い飛沫をあげていた(はずの)心の中が気になる。そんな事を考えながら、読了数日後にじわじわと胸が苦しくなりました。

これは「自伝」というより「自伝的小説」かな。

今日の「ありがとう」は、デパ地下のL紅茶店に。紅茶2品を買ったら、会計のレシートに「当たり」が出て、もう1品もらいました。なんというラッキー!ラッキーすぎて申し訳ない。

2019年6月26日 (水)

なんとなく、もたまにはいいね

「PK」(伊坂幸太郎著)。

伊坂幸太郎の作品は、少し悲しくて、少し優しくて、少し怖くて、少し可笑しい。突き放すような冷たい雰囲気があるけど、なんでも受け入れてしまう温かさも感じる。

タイトルの「PK」は、そのまんま、サッカーの「PK」のこと。過去のとある国際試合でのPKを巡って、過去と現在が不思議な形で“連鎖”する。何やら不穏な存在が見え隠れするのだけど、それが何かは分からない。なんだか分からないけど、なんとなく「解決」したような、しないような。

人によっては、「あー!もやもやする!」という気持ちになるかもしれません。終わりがはっきりしていなくても、まあいいか、と流せる私はそこそこ楽しめました。

終始漠然としているけど、「臆病は伝染する、そして勇気も伝染する」という言葉は、明確な存在として頭に残りました。

今日の「ありがとう」は、わざわざお土産と誕生日プレゼントを持ってきてくれたK子さんに。こちらがいつもお世話になってる側なのに、本当に恐縮です。

2019年6月11日 (火)

想像力発動せず

「罪の声」(塩田武士著)。一週間くらい前に読み終わっていたのだけど、なんやかんや忙しかったので時間が空きました。

あまり心が落ち着かない状態で読み進めていたせいか、なかなか文章からうまく想像が広がらず、堪能しきれなかった気がする。作品の良し悪しではなく、私の態勢が整っていなかったせい。たぶん。

イギリスのヨークの場面でも、私の乏しい記憶の引き出しからイギリスの空が浮かんでこなかった。高村薫の「リヴィエラを撃て」では、ケンブリッジの場面で気が遠くなるくらいイギリスの風景が蘇ってきたんだけどなぁ。

それでも、終盤で、子供の時に犯罪に声を使われた男性が、これまでの人生を告白するシーンは、胸が締め付けられた。そして最後の最後に、思いがけない人の思いがけない告白が…。

辛い話しだった。でも少し希望は残された。

物語の下地になった「グリコ森永事件」の頃、私はそこそこ大きくなっていたのだけど、けっこう忘れていたことが多い。あの事件、未解決だったのね。

「罪の声」は映画化が決まっていて、小栗旬、星野源の共演で来年公開予定。小栗旬が新聞記者・阿久津英士、星野源がテーラー・曽根俊也を演じる。うん、2人とも合ってると思う。他のキャスティングも楽しみだ。

今日の「ありがとう」は思ったより顔を出してくれた太陽に。洗濯物、8割乾きました。

 

2019年5月21日 (火)

過去の読書感想「永遠のゼロ」

「日本国紀」(百田尚樹著)が相当売れているらしいです。そして相当騒ぎになっている。

百田尚樹の作品は、友人がかなりハマっていたので、「永遠のゼロ」を読んだことがあります。映画化が決まった頃で、別の知り合いも絶賛していたこともあり、友人から借りて読みました。

感動する場面が多く、涙を流しながら読んだ。けど、気に入ったかと問われれば、首を振る。

どういうことかというと、個々の場面で感動しても、次のシーンに移る時に、なんとなくぎこちなさを感じた。「あれ?この体験は主人公しか分からないはずなのに、なぜ、周りの人は不審に思わずに応じているのだろう?」「どうやってこの人物の心の中が、こちらの人物にも伝わったのだろう?」と、立ち止まってしまうことが多かった。フィクションって、こんな感じだったっけ?

当時は読書量が相当落ちていた頃だったので、私の読み方が悪い(読解力が低い)のか?とも思ったし、「感動したでしょう?」と問われれば確かに随所で感動の涙を流したので、私が抱いた“微妙な違和感”を誰かに吐露することも無く・・・。

このところの「日本国紀」=百田尚樹を巡る騒ぎで、約10年の時を経て、“微妙な違和感”を思い出した次第です。

ちなみに、読書感想サイトなどをいくつか覗いてみたけれど、「永遠のゼロ」で私のような違和感を抱いた人は今のところみつかっていません。やはり読解力の問題か・・・?

たくさん本を読まなくては。

今日の「ありがとう」は、見事に咲いている公園のバラに(写真無しですm(_ _)m )

2019年4月24日 (水)

推理か愛憎か

今回読んだのは「硝子の葦」(桜木紫乃著)。

文庫本の裏表紙のあらすじは「驚愕の結末を迎える傑作ミステリー」との文で締めてありますが、私の感想は「ドロドロの愛憎劇」。

前回読んだ「ラブレス」では、主要人物である4人の女性それぞれに感情移入して心打たれましたが、「硝子の葦」の主要人物には精神的にあまり“接近”できなかったな。

でも、主人公とその母親との会話に、ぞっとするような怖さを醸し出す部分があって、そこは是非、「母親役を大竹しのぶで映像化して欲しい!」と思いました。

で、ちょっと調べてみたら、4年前にドラマ化されていたようです。母親役は多岐川裕美でした。多岐川裕美も悪くないかな。主役は相武紗季でした。ふーーーん(-_-)

ま、とにかく、ミステリーではないと思うのですよ、ミステリーでは。そして読後感は、鬱々悶々という感じでした。

さて、気を取り直して、今日の「ありがとう」を言いたい相手を考えよう。それは、すっかり馴染みになってしまった、薬局の店主さん。

2019年4月16日 (火)

強くて弱くて鈍感で繊細で

久しぶりに読書感想。「ラブレス」(桜木紫乃著)。

またも、心にぐさっとくる内容でした。2組の母娘の話。というよりは、1組の姉妹とそれぞれの娘の話。

4人それぞれ生い立ちに事情があり、どれも本人の力で避けられたことではなく、受け入れる以外に選択肢はなく、自らを納得させて生きてきた。

それでも、納得しきれない何かが積もったり、お互い反発してしまったり、でも一番気に掛けているのはお互いだったり。

流されるままに生きた者もいれば、流されまいと立ち向かって生きた者もあり、4人とも強さと弱さと鈍感さと繊細さを、異なる形で持ち合わせた女性たちだった。

姉妹の名前は百合江と里見。百合江の娘が理恵。里見の娘が小夜子。私には、百合江と小夜子、里見と理恵がどうにもごっちゃになってしまって、半分くらいまで状況を理解するのに時間がかかってしまった。

辛い話だったけど、やっぱり桜木紫乃は良いなあと確認した作品でした。

次回も桜木紫乃を読む。

今日の「ありがとう」は、ポカポカの天気に。暖かいと心も体もほっとする。

2019年2月27日 (水)

猫がいる、それだけの話

小説はちょっとお休みして、今回は「作家の猫2」。「2」ということは「1」があるわけですが、「2」の表紙に惹かれて、まずこちらから読みました。

作家に限らず、著名人(故人)と飼い猫の関係をまとめた本です。取り上げられているのは、赤塚不二夫、立松和平、谷啓、池部良、田中小実昌、萩原葉子、武満徹、久世光彦、川本恵子、鴨居羊子、中村汀女、佐野洋子など(敬称略)。

表紙に使われているのは、谷啓の愛猫。口を開けて仰向けで寝ているアホ面がかわいい。

飼い主と飼い猫の関係。特に感動秘話があるわけでもなく、起承転結があるわけでもなく、だからどうした、という話がほとんどですが、猫好きには、それでいいのです。それがいいのです。

今日の「ありがとう」は、歌舞伎の話をたくさんしてくださったK子さんに。

2019年2月20日 (水)

前向きな挫折

「舞踏会へ向かう三人の農夫」(リチャード・パワーズ著)を読み始めましたが、挫折しました。全然進まない。「ヴィトゲンシュタインの箒」並みに進まない。

どうもストーリーに入っていけないというか、ストーリーが入ってこないというか、目だけは文字の上を、行の上を通り過ぎていくのだけど、はたと気づくと、まったく読めていないのです。

以前は、それでもとにかく読み終わらなければ、と無理して読み進めましたが、とある読書家の方が、そういうときはすっぱりあきらめて他の作品を読む、ということをツイートしていたので、今回は途中で切り上げることに。

おそらく、今はこの作品を読むタイミングではなかったのだ。そう、前向きな撤退です。いつかまた手に取って読むことになるでしょう。

さて、今日の早朝の月はとっても大きくて、パンッパンッでした。擬音語ではなく、マックスまで膨らんでいる「パンッパンッ」具合。

どうやら、2月20日の月は2019年で最大の月だったそうです。国立天文台のサイトによりますと、2月20日0時54分の月が最大の満月だったとのこと。その時間は寝ていたなぁ。

でも、今朝見た月が、「私が今年見た(見る)中で最大」になるであろうことは確かなようです。一応写真を撮りました。

Img_2415

街灯の光ではないですよ、屋根の向こうに見えている早朝の月です 今日の「ありがとう」は今年最大の満月に

2019年2月 6日 (水)

終わりと始まりは同じ

今回の本は「起終点駅(ターミナル)」(桜木紫乃著)。表題作を含め6話の短編集です。

はいつくばって生きている人たちの話。外から見ただけでは、華やかに、またはしなやかに、あるいはいい加減に、流されるままに生きているように見えるかも知れないけど、それぞれ過去を引きずりながら、あるいは振り払おうとしながら生きていく。どの作品も、読後感は少々“辛い”。それでもみんな、生きることを続ける、どれも胸にグッとくる作品です。

「たたかいにやぶれて咲けよ」は、私にとってあまりに映画「デュラス 愛の最終章」とかぶってしまい、ほんの少し冷めてしまう瞬間もあり。でも、(デュラス原作の映画『ラマン』について)主人公の「俳優がレオン・カーフェイだということは覚えているが…」の言葉には「そうそうそう!私もレオン・カーフェイが好きで見に行ったのよ!」と若かりし頃を思い出した。

「起終点駅」は映画化されたので、ずっと長編だとばかり思い込んでいた。映画は未見だけど、この短い作品をどうやって映画にしたのか、見てみたい。ちなみに、私にとって主人公のイメージは、(実際に映画で主演した)佐藤浩市よりは、どちらかといえば中井貴一。

一番印象に残ったのは「潮風(かぜ)の家」。主人公が30年ぶりに訪ねた、亡き母の友人、たみ子の人生は、まるで別の時代の別の場所に引きずり込まれるような目眩を呼ぶ。読み終わった後は、哀しさと苦しさに少しだけ「安堵」が混じる。

今日の「ありがとう」は、てきぱきと動きが機敏な、スーパーのシルバー人材おじさんに。

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